消費者ローンをとりまく制度の問題点について

※本稿は東京情報大学 堂下浩教授により執筆された寄稿記事です。

以下本文。

ここ数年の間に法改正や銀行カードローンの登場などで、消費者ローンを取り巻く環境は激変した。

一方で、消費者ローンの多重債務で返済に苦しむ人はいまだに多い。

日本では貸金市場で発生した問題の解決策として出資法の上限金利引下げに代表される資金供給者への経済規制の強化策が一貫して取られてきた。

反面、金銭カウンセリングや金銭教育を提供することで返済困難に陥った資金需要者に対する債務行動の救済策はあまり講じられてこなかった。

日本で金銭カウンセリング機能が制度的に構築されない理由の一つとして、債務整理は非弁行為として弁護士と司法書士に独占されるという日本固有の制度が挙げられる。

例えば金銭面の心理的ケアに長けたカウンセラーが債務整理を行うと非弁行為となってしまう。このため貸金市場で発生した問題に対して返済困難者を抜本的に救済する社会システムに関する議論はお座なりに済まされてきた。

では消費者ローンはどうあるべきか?また私たち自身は消費者ローンとどのように向き合っていく必要があるのか?

今回は東京情報大学・教授の堂下浩氏に、消費者ローンを取り巻く制度の変遷と現状の課題を検証しながら、消費者がその利用にどう関わるべきかを論考していただいた。

1.貸金市場における規制の歴史

民事法である利息制限法の制限金利は、

  • a)元本の額が10万円未満の場合年20%
  • b)同様に10万円以上100万円未満の場合年18%
  • c)同様に100万円以上の場合年15%

と規定され、この金利基準と刻みの価格は1954年に制定されて以来改訂されていない。

一方、刑事法である出資法は1954年に制定され、質屋の実勢金利をもとに年109.5%を上限金利と定めた。

その後、高度経済成長が終焉した1970年代後半になると過剰融資や取立が「サラ金問題」としてクローズアップされ、出資法の上限金利は1983年に年73.00%、1986年に年54.75%、そして1991年に年40.004%と段階的に引き下げられた。

その後1999年に商工ローン問題が発生し、同年12月に出資法は改正、翌年6月に上限金利は年29.2%に引き下げられた。

利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間での契約は民事上無効であるが、1983年に制定された貸金業規制法では一定の要件下で「みなし弁済※」制度として認められた。

※債務者が任意で利息を支払った場合に、利息制限法を超えた利息が一定の要件のもと有効になること

そして利息制限法の上限金利以下では銀行が主に有担保・有保証融資を、利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間の「みなし金利帯」では貸金業者が無担保・無保証融資を資金需要者に提供し市場の棲み分けが図られてきた。

ところが最高裁は2006年1月にみなし弁済制度を実質的に否定する判決(注1)を出した。

この判決は当時の法改正論議に強く影響を及ぼし、いわゆる多重債務者(注2)の数を抑制することを目的として2006年12月に貸金業制度(貸金業法・利息制限法・出資法)の大改正が行われた。

この法改正で出資法の上限金利は利息制限法の水準まで引き下げられたことで、みなし弁済制度は廃止され、これにより過払い金返還請求は一気に増大した。

この時の法改正では併せて、信用情報機関が利用者の貸金業者からの債務状況を一元管理した上で、個人年収の1/3を超える貸し付けを禁止する総量規制が導入された。

そして貸金業法は公布日より4段階に渡り施行され、2010年6月で完全施行に至った。

2.上限金利引下げの影響

2006年秋頃から貸金市場において審査の厳格化が進み、消費者金融会社大手の新規成約率は55%のレンジから30%まで急減した(図1)

筆者の利用者調査によると、この成約率が急減する時期に貸し渋りも横行し、希望通りに融資を受けられなくなった属性は、職業別で見ると「経営者・役員」、「派遣社員」、「個人事業主」、業種別では「運輸業」、「建設業」、「飲食店、宿泊業」であった。

同時に規模の小さい企業に勤める就労者ほど借入困難となった(堂下(2009))。

特に当時貸し渋りの最も顕著な影響を受けたのが、個人事業主や中小企業経営者といった零細事業主であった。

図1 月間ベースでの過払い金返還額と新規成約率の推移

(出所)消費者金融大手専業7社へのアンケート調査から筆者作成(注3)

3.過払い金返還請求の影響

審査の厳格化に伴う貸し渋りの横行で返済困難者は急増し、過払い金返還へ流れたことで、その請求額は増加基調で推移した(図1)。

急増した過払い金返還請求は貸金業者の資金供与力を急速に退潮させた。

著者の推計によると06年1月の判決以来、貸金業界全体で返還した過払い金総額は6~7兆円に達した。

なお堂下(2012)が行った過払い金返還請求者へのアンケート調査(注4)によると、弁護士・司法書士は過払い金返還請求の8~9割に介入し、その手数料率は過払い金返還額ベースで中央値33%、平均値48%となる。

一方で過払い金を巡る司法界での非弁行為や脱税の横行といった犯罪だけでなく、「弁護士の安易な債務整理で益々生活が苦しくなった」という報道(注5)も目立った。

また債務整理を行える認定司法書士制度が導入された2003年以降、民事訴訟で司法書士が簡易裁判所に立つ件数は急増したものの、その大半は過払い金返還請求であり、そのスキルに対して未熟さを指摘する報道も少なくない(注6)。

実際、債務圧縮は返済困難者の短期的な資金繰りには寄与するものの、過剰な債務を抱えがちな利用者の債務行動に抜本的なメスを入れないため、過払い金返還請求だけでは返済困難者への本質的救済とはなり得ない。

同時に過払い金返還請求の増大が市場の潜在化や銀行カードローンの安易な借入を促す可能性も否定できない。

4.総量規制の影響

政府は完全施行時である2010年6月18日に、個人が貸金業者から借りることのできる総額を原則として個人年収の3分の1までに制限する総量規制を導入した。

貸金業法が国会で上程される際、三國谷勝範・金融庁総務企画局長(当時)は総量規制の根拠について借り手の統計的なデータを取らずに、基準を明確にしないまま導入を決定した旨を答弁した。

総量規制は実施され、借り手への影響は2010年6月以降に発生し始めた。

伊藤ら(2015)は総量規制導入前後2年に及ぶ借り手属性別の返済データを大手貸金業者5社から収集し、総量規制抵触者のうち「個人事業主」、「パート・アルバイト」は総量規制導入後で延滞を発生させたものの、総量規制抵触者のうち「公務員」、「正社員」は延滞を回避させた傾向を示す分析結果を発表した。

総量規制対象となった公務員等の階層は銀行カードローンの新規審査が通りやすいことから延滞を回避できたと論定した。

5. 銀行カードローン肥大化の影響

貸金業法の完全施行以降、メガバンクを中心に消費者向け銀行カードローンが残高を一貫して増やしていく。

当時急増した過払い金返還請求で経営難に陥っていた貸金業者は消費者金融のノウハウを金融機関に提供することで生き残る糧とせざるを得なかった。

一方金融機関は消費者ローンに関わるインフラとノウハウが不足していたため、消費者ローンにおいて重要な信用情報機関を用いた審査業務を保証会社(多くの場合は貸金業者)に委ねざるを得なかった。

こうした状況下で急速に発展したのが銀行カードローンの保証業務スキームである。

本スキームにおいて融資と回収は金融機関により実行され、もし借入者が一定期間返済を滞った場合や、返済不能に陥った場合などは保証会社が保証契約に基づき銀行に代位弁済(保証履行)をして、以降の債権管理は保証会社が行う。

本スキームは預金を原資とする金融機関からリスクを排除できるため、総量規制の導入後、金融庁から銀行カードローンへの参入を促された金融機関にとって合理的であった。

保証業務スキーム

また総量規制の導入当時、資金需要のある消費者にとっても貸金業者との契約時に求められる総量規制に関する年収証明書の交付などの手続きが銀行カードローンでは不要なため、貸金業者でなく金融機関を選好する傾向は強まった。

しかしながら金融機関は個人信用情報に関わる前近代的なインフラしか有しないため、銀行カードローンの与信精度が貸金業よりも劣っている点は当時から広く知られ危惧されていた。

貸金業界には与信情報を日次で共有する慣習が法改正前からあった。

法改正以前より貸金業者は貸金業界の信用情報機関で日次管理された他社借入の状況を与信に際して最も重視してきた。

一方、銀行カードローンの貸付情報は銀行業界の信用情報機関に月次で登録され、貸金業界の信用情報機関に登録する義務はない。

つまり、銀行カードローンの借入者の債務行動は日次で反映されないため、金融機関による与信精度は貸金業者に比べ低いだけでなく、原則、銀行カードローンの借入者による返済遅延に関する情報は延滞3か月間を超えない限り貸金業者に共有されないため、銀行カードローンの借入者に過剰融資を招く危険性を内包している。

6. 今日、消費者は消費者ローンにどう関わっていくべきか?

一般に消費者ローンの利用者は資金使途として「生活費の補てん」と回答する傾向が強い。

ただし、この「生活費の補てん」として回答する消費者ローンの利用者による債務行動についても検証する必要がある。

内田(2006)は消費者ローンの利用者にアンケート調査を行い、借入目的に応じて「医療費」や「冠婚葬祭費」といった比較的高額な突発的な資金需要で利用するグループ、「ギャンブル費」や「レジャー費」に代表される節約可能な用途で利用するグループ、そして資金使途が不明確なグループの3つに分けて属性を比較分析した。

その結果、資金使途が不明確なグループは、借り入れた資金の支出先を綿密に把握しておらず、無思慮に足りない資金を借りている可能性を示唆した。

実際、筆者が行ったインタビュー調査でも高い所得を有する利用者のうち「生活費の補てん」として消費者ローンを利用するグループが債務整理に陥る確率は高かった。

つまり、ギャンブルの期待値を無視するならば、明確にギャンブルのためにお金を借りている人の方が資金使途の不明瞭なまま日常生活のために借りている人よりも完済能力は高いと言える。

消費者ローンの発達は景気にプラスの効果を与えるだけでなく、生活格差や消費格差の拡大を緩和する効果もある。

なお返済困難といった負の効果については、自己破産を含めた債務整理などにより抑制可能である。

しかしながら、日本において金銭カウンセリングや金銭教育といった返済困難者を抜本的に救済する社会システムが貧弱な点を鑑みると、消費者は日常的な借り入れに慎重を期すべきである。

あくまでも資金使途が明確であり、どうしても消費者ローンに頼らざるを得ない場合に利用を限定すべきであろう。

本来お金には使途という「色」がある。その「色」を識別できないなら、無分別に借りるべきではない。お金の色は理性の源。

【参考資料】

伊藤幸郎、堂下浩[2015]「総量規制の導入経緯と問題点」『パーソナルファイナンス研究』パーソナルファイナンス学会、No.2、pp.13-26

内田治[2006]「コレスポンデンス分析によるアンケートの解析と考察」『2006年度 消費者金融白書』JCFA、pp73-82

堂下浩[2009]「見直し急がれる貸金3法」『月刊 公明』公明党機関誌委員会、2010年3月22日号、Vol47、pp.42-47

堂下浩[2012]「ヤミ金融の被害についての簡潔な報告」早稲田大学クレジットビジネス研究所、No.IRCB12-002

注1:平成16年(受)第1518号貸金業請求事件(最高裁判所)

注2:多重債務者の明確な定義はなかった。当時、日弁連、金融庁、そして警察庁において多重債務に関する定義も異なっていた。金融庁で公開された懇談会資料を精査しても「多重債務者」について明確な定義を見出すことができない。

また貸金業法を上程した当時の山本有二・金融担当大臣は事後のインタビューにて「貸金業者からの複数または多額な借金により、生活に支障が生じた借り手と認識している。

日本にはこのような借り手の層がどの程度存在するのか統計が十分ではないため、正確な人数の把握は困難」と多重債務者の定義が困難であることを認めている(山本有二「多重債務問題の根本的解決策は、カウンセリング主体の社会構造」『CREDIT AGE』、2008年4月号)。

注3:大手専業7社とは、武富士、アコム、アイフル、プロミス、GE、シティグループ、三洋信販。このうち武富士が倒産したため、以降の武富士残高を0円に近似して集計し、同時に同社の過払い金返還額を0円とした。同様に三洋信販のデータはプロミスに反映。

注4:弁護士・司法書士に依頼して過払い金返還を請求し、実際に返還を受け、かつ清算書を保有する利用者(n=55)に対して2008年5月にアンケート調査を実施した。

注5:例えば、「法律家 問われるモラル」読売新聞(09年9月11日(朝刊))など。

注6:例えば、「県内『認定司法書士』増えたけれども・・・ 目立つ『過払い』限定」静岡新聞(2013年6月18日)など。

この記事の執筆者

堂下 浩(東京情報大学・教授)東京情報大学教授堂下浩

1964年生まれ

早稲田大学理工学部卒業。同大学院理工学研究科修士了

テキサス大オースチン校で経営学修士(MBA)を取得。東京情報大学博士(総合情報学)

(株)三菱総合研究所、(株)ジャフコなどを経て現職。パーソナルファイナンス学会理事、早稲田大学招聘研究員などを兼務。専門は金融論、ベンチャービジネス論

著書に『消費者金融市場の研究』文眞堂(2005)、論文に「上限金利引下げが過剰融資を促す効果に関する実証研究 ~2001 年に実施された消費者金融会社へのアンケート調査の分析~」パーソナルファイナンス学会No.3(2016)など

■関連論文

貸金業制度2006年改正後の消費者ローンの課題と小口金融のあり方〜銀行カードローンが包含する本質的問題〜

ヤミ金融の被害についての簡潔な報告-全ての人間は、自分とやり方がちがえば、これを野蛮という-

 

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